Q and A
当院へのご質問をまとめてみました。
(お名前はニックネームとなっています)
回答は個別症例への対応を念頭に置いているため、必ずしも一般化できない点にはご注意ください。
[2] 2010-04-26
くまこさんからの相談
[認知症(疑い)の父の対応について]
Q
2月、父(76歳)は、家族の判断(易怒、物忘れ)で他の疾患(内科)で通院している大学病院で脳の検査(CT)を受けたところ、詳しい検査が必要と3月にMRI検査をする予定です(私は娘で別居しております)。
そんな折り、先日、父が倒れ、母が救急車を呼びましたが、救急隊が到着する前に意識が戻り、絶対に医者には行かないと激昂し、結局、説得することができず病院には行けませんでした。3月のMRIを待つしかないと考えておりますが、とにかく、ものすごく怒るので話のしようがありません。そして怒りながら「もう死にたいんだ」と言ったりします。どのように対応すればいいでしょうか。正直、母の方も毎日、怒鳴られ、ストレス性の難聴も発症しており心配です。父は、飲酒もし、先生から止められているにもかかわらず、家族に隠れて飲んでいるようです。昔から飲酒での失敗は多々あり、家族は大変な思いもしています。家族はアルコール依存症だと確信しています。まとまらない文章で申し訳ありません。どのような対応をすれば、父が怒らないでいられる状況をつくれるのか。母はどうすれば、父からのストレスを回避できるのかをご相談したいです。よろしくお願いいたします。
A
ご相談の内容を拝見したところ、お父様には、
1.ご家族が以前と性格傾向が変わり、易怒的、物忘れが最近生じてきた。
2.かかりつけの医療機関で、CT上何らかの病変が見つかり、MRIによる精密検査が予定されている。
3.最近倒れられ(意識消失?)、救急車を呼ぶことがあったが、受診には拒否的で説得の余地がなかった。
4.易怒的である一方、消極的ながら希死念慮を表出している。
5.かなりの大酒家あり、酒席での失敗も多く現在も飲酒を続けているが、かかりつけ医はそのことを知らない。
6.お母様をはじめとする同居のご家族が対応困難なほどの状況である。
と言うところでしょうか。
なかなか難しいケースと思いますが、詳細がわかりませんので一般的なご回答をさせて頂きます。
まず認知症は、有名なものはアルツハイマー病ですが、そのほかにレビー小体型認知症、脳の血管が詰まったり破けたりすることで脳梗塞を生じる脳血管性認知症や脳腫瘍、脳炎、そして長期の多飲酒によるアルコール性認知症などというのもあります。
お父様が最終的にどのような診断となるのかはわかりませんが、CT後にMRIを勧められているのであれば、画像検査の上で何らかの疑わしい病変があるのだと思います。確定診断はそれを待つ必要があると思います。
また、意識消失のエピソードがあったとなると、脳の血流が悪かったり、てんかん発作のような事が生じた可能性があります。
そうなりますと、やはり何らかの治療的介入を行わなければならず、性格変化や飲酒の問題も含めて、ご自宅で見守っていくことは難しいのかもしれません。ご家族の対応としましては、家庭内の問題として抱え込んでしまわれず、外部の相談機関に相談していったほうが良いのではないかと思います。相談先として考えられるのは、地域の保健所(福祉保健センター)、包括支援センター、アルコールの問題が大きいようであれば、精神保健福祉センターなどに窓口があるはずです。
またそれらの機関には、認知症やアルコール、またはその合併について得意とする医療機関や介護支援施設の情報が集まっていると思われます。お住まいの地域によって、機関の名称の違いや地域差があるかもしれませんが、まずはお父様のお住まい地域の保健所にお電話で宜しいので、ご相談してみるところからはじめてみてはいかがでしょうか。その際にアルコールの問題についてもお話しておいた方が宜しいと思います。お話の内容により担当係に回してくれるはずです。少し抵抗感があるかもしれませんが、精神科を標榜している病院(入院施設のある)では、治療の必要性があるのに本人が理解出来ない状態の時には、奥様等の「保護者」の同意を得た上で「医療保護入院」となるケースもあります。
いずれにしろ、ご家族が共倒れになってしまわないようにすることが、患者さんご自身の経過をも良くすると考えます。
ご存知のことばかりであったならば申し訳ありません。少しでもご参考いただける内容であれば幸いです。くまこ様にとって良い方策が見つかることをお祈り致しております。